歯の保存について
歯をなるべく抜かない、歯を再利用した治療
できるだけ天然歯を保存することが患者さんのお口の健康に直結するからです。また、そのような考え方の一環として、歯の移植も行っています。例えば親知らずなどの歯を別の場所に移植することで、人工歯に頼る必要がなくなります。
歯を残すことの大切さ
歯を失ってしまうとどうなるのか?
歯やお口の機能が正しく働くには、全体のバランスが整っていなければなりません。歯を1本でも失うと、口腔内のバランスが崩れてしまい、歯並びやかみ合わせの状態も悪くなる恐れがあります。また、しっかりと噛めないため消化吸収が妨げられ、お口もとの筋肉も衰えてしまい、年齢よりも老けたような印象になってしまいます。
歯の機能は人工歯で補えますが、上下左右にかかる負担が全体のバランスを崩すリスクもあるため、現状や症例を見極めた治療の提供が重要です。
天然歯と人工歯(インプラント)の違い
歯根膜の有無
天然歯には「歯根膜」と呼ばれる薄い膜が存在し、噛む時に伝わる衝撃を吸収する役割があります。歯根膜があることで、歯を支える歯槽骨に伝わる力が抑えられ、歯周組織の健康が守られているのです。しかし、インプラントには歯根膜がなく、衝撃が歯槽骨に直接伝わってしまいます。天然歯に比べると力のコントロールが難しく、かみ合わせの適切な調整が必要です。
血液供給の有無
歯根膜は血液の供給を受けています。そのため、歯周病菌などによる炎症が生じると、血液内の白血球が反応し、炎症に対して抵抗します。しかし、インプラントには歯根膜がなく、血液の供給は歯肉と歯槽骨からのみです。天然歯と比較すると抵抗力が低く、磨き残しが増えてしまうと、インプラント周囲炎を発症するリスクが高まります。
細菌の侵入を防ぐ
天然歯は細菌が侵入しにくい構造になっています。一方、インプラントの場合は、インプラントと歯肉の間にできた隙間が原因で、細菌が繁殖する恐れがあります。
どんなに美しい人工歯でも、実は天然の歯には適いません。
自分の歯を保存する治療はとても重要なのです。
きくち歯科の治療方針
自分の歯を残すことを第一に考えて治療します。
むし歯が神経に到達していたり、歯の大部分がむし歯に感染していたりする場合は、いち早く歯を保存するための治療を行います。
どうしても保存が難しい場合は、親知らずの移植や歯の再植など、人工歯ではなくまずは天然歯を活用した治療をめざします。しかし、どうしても天然歯による治療が難しい場合は、インプラントなど別の治療方法のご提案も可能です。
きくち歯科で行う
歯の保存治療の特徴
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Point.01
抜歯を回避できる
当院では歯の移植、エクストルージョン(MTM)、歯の再植・歯根端切除術などの歯の抜歯を回避する外科手術に対応しております。
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Point.02
お口全体を診て診断
歯を一度失ってしまうと、いくら他の歯を補う治療をしても、お口全体のバランスが崩れてしまう原因になってしまいます。歯を残すことがいかに大切なのか丁寧にご説明いたします。
症状に適した治療法のご提案
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歯の移植
- むし歯ではない健康な親知らずがある
- かみ合わせを考慮しても抜歯に問題ない健康な歯がある
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再植・歯根端切除
- 歯の根の一部だけが悪い状態になっている
- 歯の大部分はまだむし歯になっていない
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MTM治療
- 歯根部分は健康な状態である
- 重度のむし歯でも歯の保存をめざしたい
歯の移植
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当院は極力抜歯を回避する努力をしていますが、時には抜歯せざるを得ない時があります。
そんな時、親知らずや噛み合わせ上役立っていない歯を、抜歯した場所に移植することも可能です。ご自身の歯であれば移植しても馴染みやすく回復が早い利点があります。 -
歯の移植でできること
Check.01自分の歯を利用して、歯を補うことができる
自分自身の歯を移植すれば、安全性を確保しやすいメリットがあります。また、一旦抜歯して歯ぐきなどの制限がない状態で治療して、元の場所に戻すことも可能です。
Check.02人工物を入れないため、治療後の拒絶反応がない
ご自身の歯を利用するので、銀歯を装着する際のような金属アレルギーのリスクがありませんし、拒絶反応も起こりません。
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歯の移植と再植の違い
移植と再植は、どちらもご自身の歯を利用する治療方法です。移植の場合、抜いた歯を別の場所に埋め込んで歯の損失を補います。
一方再植は、一旦抜歯した後にむし歯などの治療を行って元の場所に戻します。 -
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歯牙移植
むし歯や歯周病など、何らかの理由で歯を欠損した部分に対して、親知らずなどご自身の別の部位の歯を欠損箇所に移植する方法です。
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外科的挺出・意図的再植
一旦抜歯した歯に対して、むし歯の部分を除去するなどしてから元の場所に戻す方法です。歯ぐきから歯が生えた状態ではできない治療が可能となります。
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歯の再植・歯根端切除
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歯の再植は、一旦抜歯した歯の悪い部分を治療した後に、元の場所に再度埋め込む治療方法です。
一方、歯根端切除とは、歯根の先端(歯の根元部分)に存在する病巣を除去する治療方法です。被せ物を外したくない場合などは抜歯をせずに歯根端切除を行うケースもありますが、抜歯することによって効率よく実施できるケースもあります。 -
歯の再植を利用した「従来の歯根端切除術」との違い
従来の歯の根の患部を切除する「歯根端切除術」では、成功率を高めるのはかなり難しいとされてきましたが、歯の再植を利用することで確実な施術ができるようになりました。
というのも、以前から行われていた患部近くの歯肉を切開し、中の骨に穴を開け、患部である歯の根を取り除くという方法は、術後の痛みが激しく、成功率も低くなってしまうのが当然でした。それが悪い部分だけを取り除き、戻すという再植の手順を踏むことで、患部だけをしっかり施術することができるようになりました。
MTM治療
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MTM治療とは、部分矯正や小矯正とも呼ばれ、一部の歯のみを動かして矯正する治療方法です。矯正といえば、歯並びや見た目を改善するための治療と思われがちですが、MTM治療の特徴は、「歯を残すこと」を目的にした矯正であることです。
治療により歯の機能をさらに高め、長期間の安定した維持をめざします。 -
MTM治療を行うケース
Check.01ミニマム矯正・部分矯正で、残存歯を守る
「ブリッジで土台となる歯が傾いている」「インプラントを埋め込む歯の欠損部分が狭い」などの場合は、MTMで歯の傾きや隙間を調整してから治療を進めます。
また、欠損箇所の状態によっては、インプラントやブリッジに頼らなくても、MTMで歯を移動させて隙間を埋められる場合もあります。Check.02抜歯が必要な歯でも、被せ物治療ができるように土台を作る
歯肉からある程度歯が出ていないと、被せ物を装着することはできません。
そのため、歯が折れるなどして歯肉より露出した部分が少ない場合、従来は抜歯が選択されることが少なくありませんでした。しかし、エクストリュージョンを行えば歯を歯肉から露出させることができますから、抜歯を回避して被せ物を装着できる状態を作ることが可能となります。つまりエクストリュージョンは抜歯をせずに天然歯を残すことに役立つのです。 -
エクストリュ―ジョン治療
エクストリュージョンとは、MTM治療の一種であり、歯に力を加えて引っ張り、歯肉から引き出して露出させる治療方法です。
この処置を行うことで、それまで歯肉で隠れていた部分を露出させてから治療が出来るメリットがあります。ゴムなどで歯に力をかけて引っ張りだすので、治療開始時は少し違和感がありますが、数日で慣れることがほとんどです。矯正治療のように少しずつ歯を移動させるので、目的の量を引っ張り出すまでに数ヶ月程度の期間を必要とします。 -
エクストリュージョン治療を受けるにあたって
エクストリュージョン治療のご利用前に、以下の注意点などをご確認ください。
- 抜歯を宣告された場合でも、エクストリュージョン治療で歯を保存できる可能性がありますが、すべての歯に適用できるとは限りません。
- 治療では2か月以上の時間をかけ、ゴムからかかる力を利用して歯をゆっくりと引っ張っていきます。痛みはほとんどありませんが、軽い圧迫感を覚える方もいらっしゃいます。
- 歯を引っ張り上げた後は、同じ期間分の保定期間を設けております。(期間は1か月~6か月程度、計2回~20回の通院が必要です。)
※MTM治療は自費治療であり、保険治療の適用外です。(治療費は¥22,000~¥220,000です。)
※治療期間や治療費は症例により変動します。
※症例によってはインプラントアンカー治療を併用します。(治療費は¥55,000です。)