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矯正 子供の矯正から大人の矯正への移行について

茨城県日立市の歯医者、きくち歯科の院長 菊地正高です。

今回は、私が所属している保田矯正塾で学んだ

「子供の矯正治療から大人の矯正治療への移行」

についてお話をしていきます。

 

目次:

1.Ⅰ期治療(子供の矯正治療)、Ⅱ期治療(大人の矯正治療)の意味

2.Ⅰ期治療(子供の矯正治療)の範疇で終わらない症例って

3.Ⅱ期治療(大人の矯正治療)を始めるタイミング

4.患者様への診断や治療方針の検査について

5.Ⅱ期治療(大人の矯正治療)を受けさせたいが経済的に

 治療が受けられない

6.治療費について

7.Ⅱ期治療(大人の矯正治療)を開始するまでの間の保定装置

は必要なのか

8.ブラケットを小臼歯につければ終われそうなんだが

9.第二大臼歯が・・・

10.拡大したのに歯列がV字型に、そして狭くなっている・・

11.『早く』っていうけどまだ3や5の萌出が完全でない

12.Ⅰ期を始める前にⅡ期治療の話をしていなかった

13.抜歯を伴う治療を嫌がられて

14.便宜抜歯?スライス?MIA?

15アライナーでの治療を希望されている

16その他とまとめ

 

1.Ⅰ期治療(子供の矯正治療)、Ⅱ期治療(大人の矯正治療)の意味

本来矯正治療はⅠ期もⅡ期もない。永久歯が綺麗並ぶまでが矯正治療。

なぜ分けるかは、分けることで患者様の支払いがしやすくなる。

ある患者様はⅠ期治療して連続でⅡ期治療に入る人もいますし、

ある患者様はⅠ期治療して、一定期間休憩が入ってから

Ⅱ期治療に入る人もいますし、

Ⅰ期治療のみ、Ⅱ期治療のみの方もいらっしゃいます。

Ⅰ期治療は成長発育の間に、上下の顎骨が健やかに

育つようにそれを妨げる要素は排除することが目的、

具体的には成長を阻害する『口呼吸』を装置で顎を拡大

することで、できるだけなくして『鼻呼吸』が

できるようにする。後のⅡ期治療をしやすくするために行う。

出っ歯や受け口を治す。上顎骨は中学生1、2年くらいで

成長は終わる、下顎骨は背が伸びる時期に成長する

(中学の後半から高校にかけて)

骨格性に問題があるケース(出っ歯、受け口)は

Ⅱ期治療を始める時期は注意が必要になります。

 

出っ歯の子は下顎骨の成長時期、背が伸びる時期

(少なくとも中学が終わるまで)を待ってから

Ⅱ期治療に入るの理想(装置名:FKO、咬合斜面板)

 

受け口の子は、上顎骨の成長が中学途中で終わるので、

上顎前方牽引装置を7,8歳で入れるのが理想だが

下顎骨の成長終わる時期、つまり高校に入るくらいまで

Ⅱ期治療は待った方が望ましい。

 

成長時期の目安は女の子はお母さんの身長に達するくらい、

男の子はお父さんの身長に達するくらいを基準に設けると

大きく間違えない。(小学校高学年で遺伝要因は発現してくる)

対策:ANBと気道の広がりと舌位を定期的に見てく

(パノラマ、セファロ)

 

2.Ⅰ期治療(子供の矯正治療)の範疇で終わらない症例って

1期治療は骨格性の問題の解決

①前後方向- ANB

②垂直方向-オープンバイト

③横方向

骨格性の問題の多くはⅡ期治療が必要な場合が多い

 

②垂直方向の問題

・拡大したのにオープンバイトが治らない

鼻呼吸

〇➡ 今度は舌位の改善

MFT

必要ならⅡ期治療

(臼歯の圧下?)

✖➡ 再拡大から(骨格広げたのに

後戻りをしている可能性)

☆CとDが動揺していると前方が

広がらないので4番の萌出を待つ

6番の位置を見て必要なら扇型のファンタイプ

のスケルトンを使用

 

・ディープバイト(原因は上?下?)

=Spee湾曲の程度、咬合挙上は可能か?

-下が原因の場合はSpee湾曲が強い

➡対処 リバースカーブ(角ワイヤーで)

―上が原因の場合は上前歯が垂れている

➡対処 16×22の角ワイヤーになったら

11間にMIA入れて釣り上げて圧下

―咬合挙上については?

装置:バイトプレート

567挺出 〇 ➡ ロウアングル

(下顎下縁平面 緩)

✖ ➡ ハイアングル

骨格性2級

③横方向の問題ー早期接触は?顎位は?

 ・歯の萌出位置異常

上顎犬歯:低位、埋伏

下顎犬歯:低位

上顎第2小臼歯:6の近心転移、口蓋側転移

下顎第2小臼歯:6の近心転移、舌側転移

上顎第2大臼歯:頬側傾斜

下顎第2大臼歯:舌側傾斜

口元に対しての不満

対策:どの患者様でもⅡ期治療の可能性がある

 

3.Ⅱ期治療(大人の矯正治療)を

 始めるタイミングは?

・6から6までは完全に萌出していないとダメ

・7は?

→1級の子は萌出していれば開始OK

→出っ歯、受け口の子は高校生くらいから

がベター

 

4.患者様への診断や治療方針の検査について

・Ⅱ期治療は前に必ずフル資料が必要

抜歯、非抜歯治療に至った論理的根拠、

治療の力系を選択した

理由の妥当性を担保するため

・パノラマ、セファロは年1回取っていくべき

・Ⅱ期でもパノラマは年1回で取った方が良い

‐歯根方向の確認

 

5.Ⅱ期治療(大人の矯正治療)を受けさせたいが経済的に治療が受けられない

 Ⅰ期治療で土台を整えれば、

その後は『いつでもできますよ』と伝える。

20歳代で矯正治療を再開なら

大きなデメリットはないが、

それ以後は

歯周病の関係で状況が変わってくる場合

がある。

 

6.治療費について

 Ⅰ期₋どこまでの範囲を行うかを明文化する

‐上は2から2の排列 下も同じ

契約書に明文化する

Ⅱ期₋セラミックのパターン、

メタルのパターン    細かい設定が必要

 

7.Ⅱ期治療(大人の矯正治療)を開始するまでの

間の保定装置は必要なのか?

・ Ⅰ期からすぐⅡ期に移行する場合は不要

・ 2から2が並んでいて、Ⅱ期治療まで6か月

以上待つなら保定装置は入れるべき

・上顎は形が変えられるように

ベッグタイプで床は馬蹄形にする

・バイトプレートを入れないといけない

場合は、

バイトプレートを保定装置として併用する

(6にクラスプを作らない)

いずれにせよ、常時装着してもらえないと

意味がないので

『お気に入りの色で装置を作製する』の

がポイント

・下顎は2から2だけワイヤーで舌側固定する

3は入れなくてもOK

☆Ⅱ期治療開始前に2から2のワイヤーは除去する

・ Ⅰ期で終わる場合は?

上のC2112Cまで 下も321123で

ブラケットをつけて並んだ

その後の保定は

上顎はベッグタイプ(床は馬蹄形)

下顎は2から2のワイヤー

更にその後は、どの時点で終了するかは

明文化しておくべき。

例 6から6の萌出までで終了

☆ 上顎前方牽引は長めに、

咬合斜面版も長めに

☆ 骨格性の問題があるケースはほぼⅡ期治療
は必要になる

★下顎のワイヤーの保定装置は、

Ⅰ期の場合は2から2の範囲

Ⅱ期の場合で

非抜歯ケースならば3から3の範囲

抜歯ケースならば5から5の範囲

 

8.ブラケットを小臼歯につければ終われそうなんだが

3の位置をもう少し是正したい

➡ブラケット4つで5000円前後、

アイライナーだと技工料金4、5万前後

契約で明文化して、別料金を設定する

これをしないと患者様ごとで不公平感が

出てしまう

 

9.第二大臼歯が・・・

・7番単独の時は 別料金で単体で治す

他の部位も問題の場合はⅡ期治療の

費用で治すべき

・7番のシザースバイトはブラケットでは

治らない

➡上にトランスパラタルアーチを入れて

上7を舌側に

下にリンガルアーチを入れて

下7を頬側にパワーチェーンで引っ張る

原因 ・歯槽長の長さが短い

・7番の萌出余地がない

・鼻呼吸していない‐舌位が悪い、

広げた後にMFTを

サボった

対策 Ⅰ期とⅡ期できちんと鼻呼吸をさせる

☆6番がシザースバイトの時は、

上下左右5番にバンドをつけて

7番と同じように治す

(上はトランスパラタルアーチ、

下はリンガルアーチ)

シザースバイトが改善したら終了

(保定は不要)

 

10.拡大したのに歯列がV字型に、そして狭くなっている・・

原因と対策 そして・・・・

原因は鼻呼吸ができていない

・拡大は3-6まで再度拡大なのか

、前方である34のみ拡大なのか

(扇形タイプ)の鑑別は?

対処

➡拡大後の模型と現時点の模型を作成して、

上顎左右の6番間の幅を測定して判断する

また拡大と歯を並べるは同時に行ってしまう

手順

1現時点の模型を作成して診断

-上顎左右6の幅を見て拡大

2IDBSと上顎スケルトンを同時に作製して、

先にIDBSをつけて、

その後上顎スケルトンをsetする

3  MFTで鼻呼吸を促進

(舌を上げる、口を閉じる

=あいうべ体操、リップルトレーナー)

 

11.『早く』っていうけどまだ3や5の萌出が

完全でない

 

それぞれのご家庭の事情

・患者様都合であることを認識する

・無理なものは無理、

終了するタイミングは同じ

・吹奏楽部で木管楽器は矯正は禁忌

練習するほど2級傾向へ

・部活でマウスピースが必要なスポーツ

は要注意

 

12.Ⅰ期を始める前にⅡ期治療の話を

していなかった

・成長期なので完璧な予測は不可能なので

費用と期間について共有しておく

 

13.抜歯を伴う治療を嫌がられて

・ネットの情報を得てきた、抜歯矯正をして

はいけないという情報

非抜歯で口元をよくして欲しい

➡診断して上でその可否を判断するが

歯を並べるのに多くの論文で4番、5番抜歯は

妥当だと言われている。

口元を引っ込めるのは多くの場合は

抜歯が必要になる。

 

14.便宜抜歯?スライス?MIA?

・フルで資料取って問題リストを上げて

6番の移動量が少ないモノを選択する

・Ⅰ期開始とⅡ期開始でドルフィンで

セファロの重ね合わせも可能

・スライスカットは?

➡6番が1級で叢生、3番が前突ぎみで

それを治す時に選択する

6番の位置を変えない時に有効

小臼歯1本分くらいのスペースは作れる

・MIAは?

➡6番は1級でなくて良いので、

歯列を引いて6番を1級にするための手段

6番が2級、3級の症例に対して1級近くに

持っていくために使用する

6番が1級の症例は歯列は引っ張ったら✖、

歯列の保持のための使用は〇

・便宜抜歯は?

➡抜歯する事で15~16mmのスペース

が得られる

大きく口元を治したい、

叢生を取りたい、

スライスカットで対応できない場合

6番の対向関係が

1級 = 上下4番抜歯

2級    = 上は4番 下は5番

又は 上4番のみ抜歯

3級 = 上は5番 下は4番 抜歯

これらが基本的

Spee湾曲が強い場合は

下の5番を抜くことが多い

☆スケルトンはトランスパラタルアーチに

変えた方が良いのか?

➡スケルトンはトランスパラタルアーチの

代わりになるが

患者様はトランスパラタルアーチの方が楽。

トランスパラタルアーチは6番にチューブを

つけて作成するが

スケルトンにチューブをつけずに

並べるのは、

5から5がラウンドワイヤーの内なら

大丈夫、

角ワイヤーになるときには

トランスパラタルアーチ(6番チューブ)は

必要。

 

15アライナーでの治療を希望されている

成人拡大=

ブラケット(きちっと排列)

利点 ワイヤー交換である程度以上の

排列が可能

アラインチューブ(叢生を取る)

利点 叢生をほどきやすい

装着位置を問わない

アライナー(仕上げ)

利点 細かな歯の移動

保定を行っている感覚で仕上げ

が可能

☆アライナーで正確に歯を動かすのは難しい

傾斜移動はできるが歯体移動が難しい

➡抜歯の症例は歯体移動なのでアライナー

は不向き

上手くいかないケースが論文で数多く

報告されているのと、

その場合は結局ブラケットを装着して

リカバリーしている

ある会社のアライナーが上手くいかなかった

時に別の会社のアライナーをやっても

所詮上手くいかないことを忘れてはならない

☆シビアなケースは

最初にアラインチューブを貼る

叢生が取れたらアラインチューブを外す前に

Vigrousに印象を送りリテーナー作製

リテーナーがある状態で

アラインチューブを除去して

IDBSの印象採得し

IDBSをsetしていく

 

16その他とまとめ

・Ⅰ期がほとんど終わりで

左が1級なのに右が2級の場合の対処法は?

➡7番の早期接触、

7番萌出時に対向の歯肉を咬んで痛いから

顎をズラして咬んでいるなど

の原因を考える

もしこれらの原因がない場合は、

Ⅱ期治療の適応となるので患者様と

相談が必要

➡その場合の治療法は 下が綺麗な場合は

上のみブラケットを貼って

右が2級なので右上に56にMIA

左は1級なので左はタイバックして

歯列を1級にもっていく

Ⅱ期治療の開始時期は、

すぐに始めるのではなく

下顎の成長を待つのと、

待つ間は右が1級になるような傾斜をつけて

咬合斜面版を装着する

それでも難しい場合は、

MIAを使用するので中学生中頃に開始が

望ましい。

・Ⅱ期治療の開始時期は、骨格性の問題がある

かないかで変わる

大きなポイントは下顎骨の成長で、

骨格的な問題がある人は

大きい人も小さい人もある程度成長が

止まるまでは次の段階にいけない、

受け口の子はもっとも悪くなるかも

しれない、出っ歯の子は少し良くなるかも

しれない。

具体的には早くても高校生くらいまで

待って頂く。待っている間はⅠ期治療。

☆下顎骨の成長は、身長の伸びの量と

ご両親の身長で予測は可能。

☆場合によっては、受け口の子は、

下顎が成長する時期に一旦治しても

再発する可能性があることも共有する。

・またスケルトンを入れても鼻呼吸ができない

子も一定数いるので、ピックアップして

きちんとした

MFT(舌位、口唇を鍛える、鼻呼吸)

が最大の保定になる。

・Ⅱ期治療前にきちんとフルの資料を取って

問題リストを作成し何を治すかを診断する。

抜歯か非抜歯が迷う場合は

Vigrousに相談すれば

抜歯、スライス、非抜歯でのセットアップの

データを作成できる。

 

きくち歯科ではこれからも、

研修で学んだ知識を患者様に還元できるように

日々取り組んでまいります。

 

 

きくち歯科 院長 菊地正高

   

〒319-1221 茨城県日立市大みか町1丁目10-14

ホームページ  http://kikuchi-dental.net/